『眠れなかった橙色の話』 ページ38
.
ほんの一時、だったけれど。
眠れぬ苦痛を思い知ったことがある。
＊＊＊＊＊
誰かの怪我とか、ホラー映画とか、直接見ていなくても話を聞くだけで傷だらけで縮こまる宮舘の夢を見る。
向井の感受性の高さ故のものだろう。
宮舘が実際に暴行されている所を見た事は無い。
それなのに、顔の見えない誰かに害される彼の夢を見るのだ。
ぎゅうっと身を縮める彼に振り下ろされる拳と、足。
助けに行きたいのに自分は動けなくて、やめろと声の限りに泣き叫んでも届かない。
そうして、何も出来ないまま、宮舘の身体から血が滲んで。
最後にはその血溜まりの中に沈んでいってしまう。
いつもそこで目が覚める。
別に毎日見る訳では無い。無いけれど。
それでも少しでも怪我や病気の話題に触れた日は眠るのが怖くなった。
宮舘がストレスで眠れないと聞いた時、自分は何でもサポートするなんて言ったが、いざ眠れぬ苦痛を味わうとどれほど無力な言葉だったか痛感する。
しかし向井はこれをチャンスだとも思った。
何も知らない自分が、少しは宮舘の気持ちを理解出来るチャンスだと。
眠れなかった日は怖い夢を見なくて済んだ日で、宮舘の気持ちを知れた日になるのだ。
＿＿眠たそうに、ふわふわとした向井の言葉。
それはあまりに悲しい、彼自身を蝕む毒の話だった。
今にも泣きそうに顔を歪めた深澤は、眠らまいと必死に頭を振る向井を抱き寄せた。
向井が心底優しく、人の気持ちに同調しやすいか知っていたのに。
自分で自分を追い詰めてると思ってもいない向井に、気付けなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 322人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
user(プロフ) - ライさん» 初めまして、コメントありがとうございます。私生活との兼合いでスムーズ更新とは言えませんが、今後も楽しんで頂けますと幸いです！ (3月5日 22時) (
レス) id: aa6a12d65e (このIDを非表示/違反報告)
ライ(プロフ) - 初めまして！更新楽しみに待ってます！ (3月5日 10時) (レス) @page37 id: 704f0c8ab3 (このIDを非表示/違反報告)
user(プロフ) - ceruさん» 初めまして、コメントありがとうございます。あたたかく有難いお言葉、心の底から嬉しいです！これからも楽しんで頂けます様、精進いたしますのでよろしくお願いします！ (2月21日 1時) (レス) id: aa6a12d65e (このIDを非表示/違反報告)
ceru(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。作者さんの作品、全て文章力も内容も作品の雰囲気も素敵すぎて、一気に全て読んでしまいました。特に、この作品が大好きです。素敵な作品ありがとうございます！ (2月19日 14時) (レス) @page2 id: c99a8bf9b2 (このIDを非表示/違反報告)
user(プロフ) - sunshineflowerlさん» 初めまして。コメントありがとうございます。その言葉が活力となっております。どうか楽しんで頂けますと嬉しいです！ (2月7日 1時) (レス) id: aa6a12d65e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：user | 作成日時：2024年2月4日 21時
