ジェンダーレスへの花吹雪 (ページ10)

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曇天。

それもそのはず、近々俺たちの住むこの地へ小さな台風が来るらしい。

しかしながら、その規模の低さからか情報を伝えるだけであり、少しばかりゆるゆるりとお届けしている。

「ねぇねぇ、阿部ちゃ〜ん！」

「なぁにぃ、ガチャピン？」

「阿部ちゃんの周りには、台風みたいな物ってあるぅ〜？」

どんな質問だ、と聞きたくなる声を思わず飲み込んで、一瞬で出てきた解答を紡ぐ。

「あるよぉ！物じゃなくて、人の字を書く『者』なんだけどね？」

「教えて教えて〜！」

変わらぬ眼で瞬きをしながら、大きな動きで俺に語りかける。

今日の俺は、いつもよりずっと優しく穏やかに本当の子どもに接するような口調で伝える。

「俺のお友だちにね、
Aって人が居るんだけどね、

台風みたいに皆を振り回すだけ振り回しといて、何事も無かったように去っていくんだよ〜！」

「そりゃ、おっかないね〜！」

瞬間ドッと笑いが起こる音をイヤモニが告げる。

しかしこのまま無事に終わる訳にはいかなかった。

スタッフさんからの慌ただしく提示されたカンペに
俺は対処することとなるのだから。

『尺が余っています。

阿部さん

あと数分繋いでください。』