ジェンダーレスへの花吹雪 (ページ17)

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コツ、コツリ。

俺は今、件のお菓子の山を抱えて

放送局の廊下を移動していた。

先刻質問された、「Aくんにそのお菓子をあげるのか」という質問に、

一つ間を空けずしてYESの返答をしたばかりだ。

そうして再度お礼を言いそそくさと立ち去った次第である。

どんな反応をするだろうか。

喜んでくれるだろうか。

嬉しそうにしてくれる？
ありがとうって笑ってくれる？

頭に描いては消え、描いては消え、描いては、また。

現状喜んでいるのは俺だ。

Aくんを家へ呼ぶ口実が出来たのだから。

プライベートでもAくんに会えるのだから。

先程扉を閉める時に聞こえてしまった。

後ろのアシスタントたちの会話。

「きゃー！！！

き、聞きました！？」

「お前…

Aさんのファンだもんな。」

「もう最推しです！

現場では抑えるの必死ですよ。

仕事に誇りを持ててるのが、唯一の自我を保つ方法と言えます。」

「…そんなに？

熱狂的だな。

それよりさっきはサンキュな。助かったわ。」

「いえいえ。礼には及びません。

そんなことより、あのお菓子を別パッケージとはいえ口にはしたんですよ！？

私たちがAくんと同じお菓子の商品を食べられることを光栄に思うべきです！」

「えぇ…。なにそれぇ…。」

思わず笑みが零れたのは内緒だ。